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思考力検定
2025年09月20日
正答率の低かった問題の紹介(2025年度 第1回 9級)
2025年度 第1回のふり返り、今回は9級の問題です。
【問題】
アスレチックコースが6つあり、それぞれのコースにかかる時間は下の通りです。かかる時間の合計が70分をこえないように、4つのちがうコースをえらびます。ただし、コースとコースの間の時間は考えないものとします。かかる時間の合計ができるだけ長くなるようにコースをえらぶと、合計何分になりますか。
正解は「18(空)+12(林)+17(山)+21(森)=68」より68分です。
正答率は38.2%で、約4割の受検者が正解しました。
時間が長いほうから4つを足すと 21+18+17+15=71 となり、これは70を超えています。ですので、「単純に長いほうから4つ」ではだめだということがわかります。そこで70を超えないように最適に差し替えていくと、21を残して、15のかわりに12を入れることで68が得られ、これが可能な上限になります。
なお、その他の解答類型とその反応率は次の通りです。
71分:8.2% 66分:8.0% 65分:6.8% 93分:5.6%
70分:3.6% 39分:2.9% 56分:2.9% 61分:2.9%
62分:2.4% 69分:2.4% 21分:1.7% 51分:1.0%
58分:1.0% 60分:1.0% 63分:0.7% 55分:0.7%
50分:0.7% その他:7.4% 無回答:1.9%
まず:4コース選びで実際に取りうる合計を示すと、次の15通りです。
空・池・山・森=18+15+17+21=71
空・林・山・森=18+12+17+21=68 ← 正解
風・空・山・森=10+18+17+21=66
空・池・林・森=18+15+12+21=66
池・林・山・森=15+12+17+21=65
風・空・池・森=10+18+15+21=64
風・池・山・森=10+15+17+21=63
空・池・林・山=18+15+12+17=62
風・空・林・森=10+18+12+21=61
風・空・池・山=10+18+15+17=60
風・林・山・森=10+12+17+21=60
風・池・林・森=10+15+12+21=58
風・空・林・山=10+18+12+17=57
風・空・池・林=10+18+15+12=55
風・池・林・山=10+15+12 + 17=54
では、それぞれの誤答について、どのような思考やミスでその値が出たのか推測してみましょう。
71分(8.2%)
時間が長いものから4つ選んだものです。
空・池・山・森=18+15+17+21=71
単純に “長いコース4つを選べば合計が最大” と考えてしまい、70超えの制約を無視または見落としたものと思われます。
66分(8.0%)、65分(6.8%)
71は70を超えるので、70を超えないように調節したが最適解を選べなかったものと思われます。
風・空・山・森=10+18+17+21=66
空・池・林・森=18+15+12+21=66
池・林・山・森=15+12+17+21=65
93分(5.6%)
「4つ選ぶ」という条件を読み落として、全6コースを合計してしまったパターンです。
10+18+15+12+17+21=93
70分(3.6%)
「できれば70に近づけたい=70ジャストが最善」と思い、存在しない組み合わせを無理に作って計算ミス(誤った足し算で70になった)をした可能性があります。
69分(2.4%)
正解の68に近い値なうえに、69は存在しない値なので、最適に近い組み合わせを選んだものの、計算ミスをしたものと思われます。
55分(0.7%)、60分(1.0%)、61分(2.9%)、62分(2.4%)、63分(0.7%)、64分(1.4%)
これらはすべて、可能な4コースの組み合わせで得られる時間です。
そのため、4つ選んだ合計は正しく出してるが、最適な比較ができていないものと思われます。
39分(2.9%)
10+12+17=39 という計算ができるので、「4つ」ではなく「3つ」と問題を読み間違えた可能性が考えられます。
以上より、制限時間を意識して調整するところまではできている児童が多くいるものの、あと一歩で正解に届かなかった児童が多かったといえます。
●過去との比較●
なお、本問題は、過去に同じタイプの問題を出題しています。
そのときは、次の7コースから100分を超えないように4コースを選ぶ問題でした。
正解は「青・黄・オレンジ・緑」の99分ですが、そのときの正答率は2.9%と非常に低く、解答類型とその反応率は次の通りでした。
赤・青・オレンジ・むらさき:66.7%
赤・青・ピンク・オレンジ:3.1%
赤・青・黄・オレンジ:2.9%
赤・青・ピンク・むらさき:1.4%
赤・青・黄・むらさき:1.2%
赤・黄・緑・むらさき:1.2%
赤・青・緑・ピンク:1.0%
赤・青・緑・オレンジ:1.0%
赤・黄・オレンジ・むらさき:1.0%
青・オレンジ・ピンク・むらさき:1.0%
赤・緑・オレンジ・むらさき:0.8%
その他:8.4%
無回答:7.4%
およそ3人に1人の66.7%が「赤・青・オレンジ・むらさき」(27+34+25+23=109分)を選んで制限時間100分を超こえていますが、これは「時間が長いコースから4つを選ぶだけで制約を無視している」という、今回(71分:8.2%)にも見られた傾向です。
そのほかの解答も「赤と青をほぼ必ず選んでいる」ものが多く、赤27・青34の値が大きいので「入れるべき」と考えた傾向が見られます。
しかし正解は「青・黄・オレンジ・緑」であり、赤+青を選ぶとほぼ超過するため、最適解が直感的に見えにくかったものと思われます。
一方で今回は、「長いもの4つだと1分オーバー」であり、そのあと「長いものから3つを残した上で4つ目を入れ替えるだけで答えにたどり着けた」ため、前回よりも考えやすかったものと思われます。
さらに、前回は 7C4=35通り、今回は 6C4=15通り と、今回のほうが総当たりしやすかったのも影響があったものと思われます。
●まとめ●
今回の問題では、制限時間内でできるだけ合計を大きくするという条件付き最大化の思考が求められました。多くの受検者は条件を守ることはできており、あと一歩で正解に届くケースが多い結果でした。誤答は「長いものを優先して選ぶ単純戦略」や「置き換えの比較不足」が中心で、最適解を導くための比較検討力・検証力に課題があるといえます。このタイプの問題は、条件整理、候補の洗い出し、最もよい組合せを選ぶという一連の論理的思考プロセスを鍛えるのに有効です。